集中力の高い人は、実は長時間集中していない
「集中力=ずっと続くもの」と思い込んでいる人が多いと思います。
高い集中力を持った人は、長時間の集中状態を持続させている......。
そんなイメージがありますが、実は違います。
そもそも人間の脳は集中力を持続させないようにできています。
なぜなら、はるか昔、野生の時代を生きていた記憶が私たちの「本能」として残っているからです。
あなたがサバンナで生きる草食動物だったとして、何かに集中することは
生き抜くためにプラスでしょうか?マイナスでしょうか?
もしオアシスの水源や芽吹いたばかりの若草に目を奪われ、食事に没頭していたら
いつ肉食動物に襲われるかわかりません。自然界においては、集中していないほうが生き残れます。なぜなら、多方向に注意を払うことができ、危険を回避できるからです。
言い方を変えれば、何が起こるかわからない環境を生き抜いてきた記憶が人の集中力を怠慢にさせているのです。
では、どのくらいの間なら集中力は持続するのでしょうか。
最近の研究では、十分に鍛えられている人で「120分」とされています。大人でも子供でも、イスに座り、同じ姿勢のまま1つの作業に没頭できる時間は、長くて30分といったところです。
そして、集中力は勉強などの作業を始めると徐々に高まっていき、ピークを過ぎるとグンと下降していきます。元々、持続しない性質を持っているのです。
一見、集中力がずっと続いているように見える人ほど、うまく休憩を挟み、短時間の
集中状態を繰り返しています。短時間だから疲れない。疲れていないからこそ集中状態を繰り返せます。
飽きる前に焦らす。まとまった時間は短く切る。
この「集中力は長く続かない」という性質を逆手に取り、集中できる時間を効率的に使っていく方法があります。それはあらかじめ時間を短く切り、「もうちょっとやりたかった」「もう少しやれたかな」というところで仕事や勉強を打ち切ってしまう方法です。
途中で手を止めてしまうことのメリットは、3つあります。
- 疲れがたまりにくくなる
- 15分なら15分、30分なら30分と短時間で区切ると、時間管理がしやすくなる
- 途中で終わった感覚があるので、「早くあの続きがしたい」と思える
とくに3つ目のメリットは大きく、あえて休憩を取ることによって休んでいる間も
「もうちょっとやりたい」というモチベーションを保つことができます。すると仕事や勉強を再開したとき、スムーズに集中できるようになるだけではなく、持続させることができるのです。
これを「焦らし効果」と呼びます。
仕事や勉強のスピードを速くしたいのならば、自分のやりたい気持ちを上手に焦らすこと。「もう少しやりたい」「もう一つ多くやりたい」という気持ちを焦らすことによって、パフォーマンスの向上に活かしてみてください。
取り組む時間を短くするほど、早く終わる
「あれもこれもやれる......」と思っている状態ほど、集中できず、結果に結びつかない可能性が高くなります。
こうした事態を避けるための非常にシンプルな対応策があります。それが仕事や勉強の時間を短く区切ることです。先ほどの焦らし効果でも「15分なら15分、30分なら30分と時間を区切ること」をお勧めしました。すると、できることは自然と絞られてきます。
これは不自由なようですが、集中力は自由な時よりも制限のある状態のほうが高まっていくのです。
時間を区切る、たとえば「定時に帰る」というようなデッドラインが定まると、そこまでに最低限片づけなければならない仕事量と処理にかかる時間を意識し、発想が変わります。つまり、取り組む仕事が決まり、使える時間が定まると、選択肢が絞られます。その結果、集中力が増すというカラクリです。
すると仕事や勉強において、短時間で高い成果を得ることができます。
集中力が高まった状態での仕事や勉強は、費やした時間が同じでも、より質の高い成果へとつながります。あるいは集中力を高め、処理できるスピードを2倍、3倍にアップできれば、所要時間を2分の1、3分の1へと圧縮することが可能です。
これは生まれ持った才能ではなく、努力や習慣化、環境の変化によって身に付けていくことができます。
たとえば、「働くママ(パパ)」は、出産以前に比べて時間の使い方が格段に効率化されていきます。これは自然と時間の区切りが生じるから。朝は保育園に送り届けるまでにやるべき家事を片付け、夜も残業ができないので仕事を効率化するしかありません。
その結果、集中力を生かすリズムが身についていくのです。
まとめ
- 「できる人」は短時間の集中を繰り返している
- 最大の成果は、短時間の集中によって手に入る
- 「判断」や「迷い」がなくなる分、集中力は高まる